晴れてはいるが波立っている。
スマホのマップで船の現在地がわかる。インド洋の真ん中?モルジブの南あたりか。
モルジブか、、、。また想い出が甦る。

10数年前弘嗣とモルジブに行った。
幡ヶ谷で一緒に暮らしている頃、旅行しようとなった。「どこか行きたいところがあるか?」と聞いたら
「熱海かハワイです。」「熱海!何故?」と僕は驚いて聞いた。
「両親の新婚旅行の場所だと聞いて。」弘嗣のご両親は生まれは父親が宮崎、母親が札幌だと聞いた。
1960年~70年代熱海は新婚旅行のメッカだったという。僕の兄貴、暢夫さんも横浜育ちなのに熱海だ。
「熱海、昔は良かったらしいけど今はゴーストタウンだってよ。地震も多いし。」行きたくない僕の返事だ。
「でも行きたいんです」考えておく。
「それにしても今更ハワイは何故?」「皆行っているのに僕は行ったことがないからです。」考えておく。

海が好きな僕が横浜で生まれ東京で育つと 海といえば湘南、三浦半島、伊豆半島だった。
湘南海岸に飽き 三浦半島に飽き 伊豆半島は東も西も中伊豆も飽きずに何度も行った。
だからもちろん熱海も。
しかし沖縄、石垣島を知るとシュノーケリング、スキューバダイビングにはまり海の世界にはまった。
熱海はいつの間にか嫌いになっていた。

ハワイは若い頃僕にとってもまさしく「憧れのハワイだった」初めて行ったのは20代親父と一緒だった。
まずオアフ島 それから20年ほどの間に身内や友人とハワイ島他三島に行った。
シュノーケリングの出来るハナウマベイが大好きだった。
しかしどの島も町並みは好きだったが シュノーケリングの出来る海がなかった。
そして街も近代化されいつの間にか僕の好きなハワイでなくなっていた。

このピースボートのコースは3年前、決めるのに3つのコースがあった。
今のこのコースに決めた理由の一つが 弘嗣の行きたかったハワイが入っていたこと。
二つ目は僕がスエズ運河を渡りたかった。
そうするとピラミッドも見せられる。地中海に入ってギリシャもイタリアのベニスも見せられる。
僕がもう一度見たかったところばかりだ。

ところが出発の二ヶ月程前 急にスエズ運河が中止になった。戦争の影響か安全のためらしい。
そのためアフリカのモーリシャスから南アフリカのケープタウンでぐるっと回る。
当然ピラミッドもギリシャもイタリアもなくなった。
その上何故かハワイもなくなった。弘嗣は僕ほどガッカリしていない。

考えておく。の後モルジブに一緒に行った。
弘嗣が北海道に帰る前に熱海も一緒に行った。

今朝久しぶりに晴れた。朝食後二人で甲板を散歩した。
「僕すごい幸せです。」と弘嗣。「いえ、すごいじゃなくて何だか幸せです。」
こいついつの間に僕の口調を、と思ったが「そう良かったな」とだけ言った。