船内新聞には船長主催の本船歓迎セレモニー ウエルカムドリンクをご用意してお待ちしております。
ドレスアップをしてお越しください。とある。その後別の場所で社交ダンスパーティー。
乗船してまだ4日目 もうドレスアップにダンスパーティ!ピースボートはお金持ちが乗ると聞いていたが僕と弘嗣は大丈夫だろうか?
東京でもほとんど着ない用意してきた品のいいストライプのスーツ 半年前に洗濯やから返ってきた真っ白いワイシャツ 3本のネクタイ 革靴。完璧だ!
弘嗣はサラリーマン時代に着ていた見覚えのあるスーツ 水色のワイシャツも見覚えがある。ネクタイ
二本。「何 これ!」と僕。「正装っていうから」「これだけ?」「そう 二本」そこには結婚式用の幅広の白いネクタイと葬儀用の黒いネクタイ! 他の奴ならそんな冗談だろ!と言えるが 弘嗣をよく知っている僕はそんなバカな!と信じるしかなかった。(本当の話です!)
僕のおしゃれなネクタイを貸した。まあ若さのせいか見た目は決まっていた。
そして会場に。ウエルカムドリンクはロゼのワインにした。
船長(アメリカ人)の挨拶がありお偉いさんの挨拶が続いた。僕と弘嗣は隅の椅子に座り大半はグラスを持ったまま立って聞いていた。ごった返していた。
僕は挨拶は聞かず(見えないせいもあった)人達を見ていた。男性は一様に部長か課長か引退した社員の忘年会のようでそこに唐突にドレスアップした女性陣。肩はそんなに出さなくてもシミが。ベリーダンスのお腹はちょっと違うかな? いやそんな問題じゃない。何かが違う、とそこでグラスの割れる音 テーブルからシャンパングラスが落ちたようだ。白いドレスの女性が小さな悲鳴。ごった返しの中ボーイさんが箒とちりとり。僕の前のピンクのドレスを着た女性がヒールを脱ぐ赤いドレスを着た女性の肩につかまり椅子に立つ。何?と僕 挨拶しているお偉いさんをスマホで撮っているようだ。
小さな丸いテーブルにはワインの入ったグラスがある。赤いドレスがあっ!と言う。ワイングラスがガチャン! 今度はウエイトレスが箒とちりとり。
何やら歌手が歌い始めたところで社交ダンスパーティの会場に向う。
ウエルカムセレモニーではオードリーヘップバーンやグレースケリーやクラークゲーブルがいる会場を想像していた僕がいけない。次は期待しよう。 会場の隅でドレスを着た五歳くらいの女の子と母親が両手を繋いで小さく回って遊んでいる。
人はまばら。時間になっても10人もいない。社交ダンスパーティなのでは?
想像するに社交ダンスを踊れる人が踊り他は見学する。なのに踊る人がいないからガラン!
弘嗣が夕食はビーフシチューとパンナコッタをレストランで食べたいと言っていた。
僕はダンスパーティが面白くなければと言っていた。
レストランに向かう。「パンナコッタって何?」「見れば分かります。」
食後にデザートが出た。「これがパンナコッタです。」「へえ、何?」「パンナコッタです。」
不毛の会話を僕はしない質だ。
ビーフシチューは固くあまり旨くなかった。
なんだかなあ!の一日だったが妙に面白かった。