若林哲行プロデュース公演「たからモノ」を7月1日 座・高円寺2で観た。
戦争物で、夢いっぱいの五人の子供達が成人して、人間魚雷となって死んでいく話だ。
一人生き残った老人の追想から舞台は始まる。その老人役が若林さんだ。

若林さんと知り合ったのは、1982年美輪明宏作・演出の「ああ、女の友情」サンシャイン劇場での
共演だった。
「大門五郎に頼んだ役だけど、スケジュールがダメで、あんたどう?」美輪さんからの電話だった。
僕は二つ返事で受けた。
世界三大美女、クレオパトラ(美輪明宏)楊貴妃(勝呂誉)小野小町(山谷初男)と徳川家康(近藤準)に
絡む団地の主婦達、松竹梅に桃子の四人と旦那たち。
僕は松子の役だった。全員男優で若林さんは誰かの旦那役だった。
舞台は団地で、近くにあるスナック(ママはクレオパトラ)で起こる奇想天外、ハチャメチャな話だ。
美輪さんが理路整然とした人なんてとんでもない。美輪さんが書いた脚本はぶっ飛んでいて、老人たちが
ロックを歌って大騒ぎ。名の知れた重鎮の俳優さん達が戸惑い、美輪さんは笑っていた。
ラストは日替りゲストが(天知茂、中山仁、にしきのあきら、梨本勝、大屋まさこ‥)キンキラの
紙吹雪の中、ギンギンの観音様になって、美輪さんの唱歌で終わるという話だ。
戸惑う批評に「演る時代が早すぎたかしら」と美輪さん。

僕が人間魚雷の事を知ったのは、特攻隊なるものを知るずっと後だった。
二十歳になる前か、岡本喜八監督の「肉弾」だった。ペーソス溢れる戦争映画だが染み入る悲しさは
忘れられない。今回の特別攻撃隊人間魚雷「回天」、敵の戦艦に人間魚雷となって突っ込む若い兵士の
顔を舞台正面に観せる。兵士の意気込みと恐怖の入り混じった最後は涙が出た。
戦争は嫌だ! 

何十年ぶりかで会う友人達には「歳取ったなぁ」と思うことが多いいが、何十年ぶりかで観る役者さんの
舞台には円熟味を感じる事が多い。
20代で共演した若林さん、始終会っているのに江上君しかりだ。