アメリカのウィリアム・サローヤン作 宮田慶子演出の舞台を観た。
文学座の後輩渋谷はるかと木場勝己が出演していたからだ。
1940年にピュリッツァー賞を受賞したサンフランシスコの波止場の外れにある
安っぽいショーを見せるニックの酒場が舞台だ。
そこに通う様々な職業、人種が垣間見せる人間模様の話だ。
まさしく雑魚寝と同じ。
店に芝居のチラシを貼っていたが、どうやら坂本昌行と野々すみ花が有名らしい。
僕は二人を全く知らなかった。
あまりの無知さに同伴する友人が、観劇前日にアメリカのトミー賞のDVDを
見せてくれた。
そこで歌い踊っているのが坂本君だと。歌も踊りもすばらしかった。
野々すみ花さんは宝塚の女役のトップだったと聞いた。
二人はスターだとチラシを見た客が言った。僕は観る前に少しがっかりした。
いわゆるスター芝居にウンザリしていたからだ。上げたらきりがないほどに。
ところがどっこい、さすが宮田慶子演出!(彼女演出は数本観ている)
ピアノの名手、ダンサー、娼婦、警察官、逃亡者、謎の女…。
酒場に通う様々な人間たちが、当たり前に何かを背負って当たり前に去っていく。
この芝居の素晴らしさは、台詞の多少や出番にかかわらず市井の人達が皆浮き彫りに
されている事だ。(スターがいるにもかかわらずチラシの写真は並列だ)
役者の力量か、演出の力量か、僕は配役の選出に拍手だ。
僕が好きな場面は娼婦が警官に踊らされるシーン。
踊れる人が少しだけ、歌える人が少しだけ、グッとくる。
シャンパンの効果音もグッときた(笑)
ラストの後味はアメリカならではか。
おっと又脱線。このブログは雑魚寝に関わった人たちを書くはずだった。それが一度でも。
決して劇評ブログではない。
木場さんの名前を知ったのは今から27年前、「れすとらん自由亭」の芝居にバイトの江上君が
出ている時だ。「いい俳優さんと稽古していますよ!」同業者の役者を滅多に褒めることのない江上君。
それが木場さんの名前を聞いた初めてだった。江上君も初対面だとか。
それから一二度来店してくれたか? 僕は彼の芝居を数本観ている。
好きだったのは佐藤オリエさんとのヘッダガブラー。程なく読売演劇賞を取って納得。
終演後渋谷はるかの楽屋見舞に行った。木場さんにも一言「良かったです」が言いたくて
挨拶に行った。当然木場さんは僕を全く覚えていない。27年前に店で「いらっしゃいませ」しか言っていない。
ゴメンね、木場さん。突然(笑)
そう言えば小泉今日子さんが初めて来店したとき「おお、いらしゃい!」と常連客を迎える声で。
待ち合わせの渡辺えりが「水島さん、キョンキョン知ってたの!」「イヤ、よく知ってる顔だったので…。」
そういうことってありません? ないか…。
舞台7月2日まで 頑張って下さい。