これは高熱で書けなかったNYを書く。
チャイナタウンでのランチを後に弘嗣の予定はブルックリン橋に向かうはずだった。地下鉄かバス停を探しているとすぐ側に大きな橋がある。「この橋は?」グーグルマップで調べるとマンハッタン橋だった。
偶然だがここでもいいのではないかということになってマンハッタン橋を渡ることにした。
橋は左側に地下鉄が通りかなりうるさいが右側の歩道は自転車やジョギングや一般の人達がゆったり歩いている。
橋の欄干からはハドソン川と遠くにはブルックリン橋も見える。
以前読んだ本にはブルックリン橋は観光客でごった返していると聞いていたので
のんびりと高い橋から見る景色はハドソン川を挟んで、大都会NYの静かな一面を見るようで、良かったと思った。
天気も良くシャツ一枚でも汗ばむほどだったが、なかなか渡り切れない。
まさか渡りきるのにゆっくり歩いたとはいえ1時間もかかるとは思わなかった。
ようやく渡りきったところで公園で一休み。向かいのベンチに頭からすっぽりぼろ布を被ったホームレスがベンチで寝ていた。靴から見ると男性だろう。
あの9.11のグランドゼロに行くことにした。
地下鉄の入り口がわからずオロオロわかったと思ったら線が違う。
何とかグランドゼロの駅にたどり着いた。
当時あの映画のような飛行機の映像を何10回と見てその後のドキュメンタリーも何回も見た。
その後世界貿易センターのツインタワー倒壊跡地に慰霊碑メモリアルが出来たことは聞いていたが映像でも見たことのがなかった。
アメリカのことだからどでかい慰霊碑を建てたんだろうな位に思っていた。
ところがどでかいことはどでかいが四角いプールの中にもう一つ小さな四角いプールがあり一面から静かな滝のように水が流れ落ちる。静寂だ。
プールを覗く周りには磨かれた黒い石に犠牲者の名前が刻まれている。
僕は何故かこの慰霊碑を考えた人設計した人を思った。
ありきたりの言葉しか浮かばないがそこには深い悲しみと平和を望む強い気持ちだけがあり憎しみの微塵もなかった。
僕はしばらく見ているうちに自然と両手を合わせていた。
このメモリアルは北棟南棟の跡地にそれぞれありノースプールサウスプールと呼ばれて二箇所ある。
メモリアルの周りは整然と木立に囲まれているが、その向こうは超高層ビルのNYだ。石に刻まれた犠牲者の名前を写真に撮ってみたら偶然にも青い空と超高層ビルが映っていた。
この後の何十年も続いた報復戦争はなんだったんだろう。