朝、目覚めると船はイースター島の近くに停泊していた。
イースター島のモアイ像はテレビや写真で何度も見ていたが「百聞は一見に如かず」を身をもって知っている僕は、今回の船旅で楽しみにしていた一つだ。
ポリネシア諸島の火山島で一番近い有人の島でも2000㎞はあると言う、まさしく絶海の孤島だ。
ここでの上陸は厳しく本来本船からテンダーボートで島までのピストンで2日間の予定が、上陸員数制限で3日間になった。
僕達は明日2日目だ。
朝いちばんに見たイースター島は今回の船旅で一番好きな景色だった。
想像していたよりずっと大きな島だが小高い山が平らに広がり左端は海になだれ右端は絶壁だ。その島の全景が船から一望できる。
遠くから見ても高いビルは一切ない。
第一陣がテンダーボートで島に向かう。
少し驚いたのがテンダーボートなる小船が迎えに来るのかと思っていたら、何と本船の救命ボートだった。避難訓練の時に甲板の天井につるされた何隻もの救命ボートの船底は見ていたが、僕達のテラスから見た救命ボートはオレンジ色のしっかりした船だった。60人程乗れるらしい。タイタニックで見たでかいゴムボートとはえらい違いだった。
本船からテンダーボートに乗り移る様が部屋のテラスから見える。ボートは前後本船に縄でくくられているが波とともに隙間ができる。
四人がかりで乗客に今だそれいけみたいに飛び乗る。
躊躇して飛びっ乗った女性が一人船員に両手をつかまれたままタイミングを外し足を踏み外して宙ぶらりんになった。僕は可笑しくて不覚にも笑ってしまった。
何しろ平均年齢75歳の乗客達ですから。
夕方プリセスシアターでラバヌイ(現地語でイースター島)の伝統舞踊ショーがあると言うので観に行った。
僕はミクロネシアやポリネシアの島々に行ったら必ず観る好きなダンスだ。
女性の独特な腰の振りと男性の力強いが軽妙な動きが大好きだ。
音楽と楽器、歌も独特だ。
満喫して劇場を出ると入り口にイースター島の土産物屋台が出て黒山の人だかりだ。明日島に向かうから見なくていいかと思っていたら、先程まで踊っていた男性が劇場から出て来た。僕はすかさず男性に頼んで弘嗣に写真を撮ってもらった。振り返ると男性は衣装のまま売り子になっていた。いいなと思った。
若さもいいが老いもいいなんて誰かが言っていたがやっぱり若さがいい。
写真を見てそう思った。