入国審査の長蛇の列から下船し行動開始が午前10時。
観光地はNY初めてという弘嗣と熊木さんに任せた。
港の近くからバスに乗った。何とNYのバスですよバス!
僕が初めてのNYの70年代 観光客はバスも危ない落書きだらけの地下鉄もダメ昼間の一人歩きも危ない 夜は身ぐるみはがされるか殺されるか。
ちょろちょろ歩きが大好きな僕を気遣ってか親父は僕を脅す。
僕たちのホテルはセントラルパークの真向かい、ブロードウェイもすぐだ。
ホテルに着いてすぐに親父は仕事がある。僕は日本語で書かれたブロードウェイ近辺の地図を親父に見せ、この辺りまで一人で行きたいと言う。親父は渋々承諾し英語で書かれたホテルの名刺を必ず持っていくようにと出かけた。
真っ昼間だ。僕はニューヨークだ!ブロードウェイだ!ミュージカルだ!それだけしか頭になく地図をポッケに街に出た。
先ずは入れるところにと大きなゲームセンターに入った。日本でもゲームセンターなんて行かないのに。アメリカ人ばっかりだ。ちょろちょろしていると後ろから突かれた。振り返ると大きな黒人が何か小さく言っている。僕は何?と見返す。声が聞えた「マネ マネ」僕は「ノー ノー」と小走りにゲームセンターを出た。通りに出ても付いて来る。僕は大きなホテルに咄嗟に入った。ホテルのロビーの椅子に何気ない振りで座って外を見ると、ガラス張りにへばりつくように黒人が僕をじっと見ている。僕の心臓はバクバク。どうしよう!受付に言うか?でも何て言えば?見回すとレストルームとある。僕は客を装ってゆっくりガラス張りから見えない角を曲がる。トイレにも入らず身を隠す。数分してそっとガラス張りの向こうを見ると黒人はいない。
ロビーの椅子に戻り再度確認する。ゆっくり外に出る。見回す、いない!
ホテルの部屋を出てから15分の間の出来事だ。
それ以来二度目の時も僕はNYのバスにも地下鉄にも乗ったことがない。
今回弘嗣に言った僕の目的はバスと地下鉄に乗りたいだけだった。
分かりづらいバス停をやっと探し乗った。運賃はビザカードをタッチするだけだ。僕はクレジットカードを二枚持っていたがタッチに対応していないということで弘嗣のカードを借りた。
車内は座席の配置は日本と多少違うが大した違いはない。黒人が多かった。
目的のチェルシーマーケットまでは5つほどの停留所だった。
看板にチェルシーマーケットと書かれているが倉庫のような建物で入り口がわからない。小さな入口を入ってみるとだだっ広いいわゆる商業施設だった。
レストランも服もおもちゃ屋もある。
建物はクッキー工場をリノベーションしたというだけあって中は頑丈で太陽光はないが工場の雰囲気は残っていた。ハロウィンの装飾があちこちに。
商業施設はもうたくさんだったがトイレは助かる。
マーケットを後に徒歩でクリストファーストリートのストーンウォールに向かう。ゲイタウンで名を成したクリストファーストリートとストーンウォールは僕の行きたかった場所で今や歴史に残る街か?