迷路の一角にあるAさんの家から表に出るとかなり大きい広場に出る。
ジャマエルフナ広場だ。
そこには屋台が幾つかありオレンジを山のように積んだ店で搾りたてのジュースが飲める。大道芸人や猿回し籠に入ったコブラを笛で操る蛇使い本物のコブラを始めて見た。広場を路地に入るとありとあらゆる店、服、金物、宝石等々土産物店も含め小道の両側にひしめいている。荷を積んだロバが通るのがやっとだ。
中でも僕が驚いたのは香辛料の多さだ。見たこともない香辛料が桶に入って山積みになっている。
そして忘れられないのが公衆トイレ。
フナ広場の隅に3メートル程の四方に囲まれた塀がある。屋根はなく入り口は狭い散歩中に催した僕は勘でそこに行ってみる。中に入ると何もない空間でよく見ると四方に溝がある。そして溝に向かって数人が立ちションしている。
立ちションしながら臭いに気付く。溝以外のスペースに紙と大便があちこちに。
入った時には汚れたトイレだくらいで気付かなかった。どれも乾いていたからだ。用を済ませた僕はつま先立ちで紙を避けて出た。
あのスペースで大便出来る度胸が今だに信じられない。
Aさんに話すと笑顔で、乾いた便は誰かが集め肥料にする。掃除はたまに降る雨がしてくれると。

それから5年後に来た時にはトイレはなかった。
フナ広場は以前より屋台が増え多少賑やかなだった。
最近見たテレビでは観光客に大人気のマラケシュのフナ広場は食べ物屋台が連なり 夜はごった返している風景が映し出されていた。
何だかさよなら僕のマラケシュと呟いた。