モロッコは大好きな国で今回で三度目だ。
モロッコが好きというより正確にはマラケシュという町が大好きだ。
一度目は45年程前親父と来た。マラケシュに住む親父の友人アメリカ人の家に一週間滞在した。マラケシュに着いた時のあの衝撃は忘れられない。
まさしくアラビアンナイトの世界に突然放り込まれたような 目の前の景色が今まで見たこともない別世界だった。
まずジュラバという民族衣装フード付きの袖も丈も長い、映画「アラビアのロレンス」のあれだ。女性は色付きのその衣装にヒシャブというスカーフか目だけしか見えない黒いブルカという頭巾?映像でしか見たことのない人達が普通に歩いている(当たり前か)
街は塀の高い家々が連なって迷路のようにあり、どの家も門がないので迷路に入ると一直線の壁に見えるが所々に木で出来たしっかりした入り戸がある。
親父の友人Aさんの自宅もそんな中にあった。僕は家を覚えるのに三日かかった。入り戸を入ると広い中庭、真ん中に小さな噴水もあった。そこを囲んでテラスのある二階建ての住居がある。
外からは塀の内側が全く見えないので中の広さにびっくり!
びっくりついでにもう一つ。

滞在中イヴ・サンローランの別荘だというところに招かれた。
本人は不在だと言うがどういうパーティーだったのか今だにわからないままだ。
何にびっくりかというとサンローランの別荘にではない。何故って30歳の僕はサンローランを知らなかった。世界的高級ブランドの人だと知ったのはずっと後だ。
中庭の広さだ。草野球が出来るほどの中庭を挟んで回廊があり途中幾つかの屋敷がある。僕達は談笑しながら回廊をゆっくり歩いた。僕達とはアメリカ人10人程フランス人10人程日本人僕一人。僕は当然談笑どころではない。
広い食卓が用意され中二階にもあった。
部屋はいたるところ間接照明で慣れるまで人の顔も料理もよく見えない。
親父が僕に囁く「好きなもの飲みなさい」親父は人と談笑しながらも僕に気を使い色んな人を紹介してくれた。給仕さんも「こいつ飲めるな」と踏んだのかすぐに注ぎ足してくれる。
中二階を見上げふと気付いて親父に聞く。「何故フランス人と別卓なの?」「アメリカ人は一緒で構わないがフランス人は嫌みたいです」

続きはまた!