客でもあり友人でもある女流作家、岡部えつの新作「気がつけば地獄」を読み終えた。
物語は宅配便の誤配達から始まる。
誤配達ってそうないよな、なんて思いながら「ここにサインを」と言われると確かめもせずサインすることはよくある。
この主婦は夫に内緒で美顔器を買ったが、ダンボウル箱を開けている途中で違うことに気づいたようだ。
そこからは僕の知らない言葉、リンクをタップ、スクロール等々が飛び交う中、主婦の慌てぶりと美顔器の心情が面白い。

そして主婦はツイッターのアプリを開く。
なんじゃ、ツイッターのアプリってと僕。
そこに何やら呟いて送信した。
だけなのにその後主婦とその夫その愛人の心理描写が目まぐるしく展開する。
僕の知らないことば、ツイート、リツイート、リプライ、アイコン、フォロワー、フォローバック、リテラシー、タップ…..とともに。
僕がわかったのはフェイスブックとYOUTUBEだけ。
なのにその不気味さが、男女の愛情と憎悪、嫉妬と疑惑が絡まって面白さが倍増する。
何が不気味って対面する会話がほとんどない。あっても裏読み会話。

岡部えつの心理描写(特に女性)の秀逸さには定評があるが、今回は男性の心理にも納得するだろう。
男には理解出来ない女の化粧は命がけ、女は男なんて見ていない、女を見ている。怖!
未婚の岡部えつが家族の輪郭を捉える。未婚だからこそか。

面識のない女2人がツイッター上で励まし合い仲良くなる。
夏目漱石や森鷗外で育ち、文通欄しか知らない僕には理解出来ない。
しかし、想像力をかきたてるたくさんの伏線をはっておきながらの、ラストはさすが岡部えつだ!
超おすすめ作品。

たくらみー僕は現在ガラケーで2.3年後にはスマホにしようと思っている。
     そして必ずツイッターをやる。プロフィールも決めてある。
     男性27才独身 IT会社勤務 ハンドルネーム 淋しがり